拍手SS014 あきら様×白石ぬくもり五題「幸せの代名詞と言えるか否か」


帰ってからご飯を食べて、
風呂に入って髪を乾かして。

今日はいつもよりたくさん疲れた気がする。
はぁ、とため息をつく。


「どったの?お疲れ?」
「まぁ…そうです…」

いつまでも抜けない丁寧語。
あれから何年も経っているのに、
習慣とは怖いものだ。
つくづくそう思う。

もう、こんなに近くにいるのに、
なんでだろう?

「あきら様?」
「ん?」
「僕のこと、好きですか?」
「うん、なんで?」
「なんでって…」

天然な彼女には分からないかもしれない。
僕が彼女に「様」をつけるのは、普通はおかしいということを。

「まぁ…いいや…」

僕は飲みかけのビールを置いて、彼女を後ろから抱きしめる。

「なっ…なにすんのよいきなりぃ!」
「ちょっと、こうさせて下さい…」

僕にはちょっと代わった癖があるらしい。
彼女を抱きしめるとき、ちょっと泣くらしい。
自覚はまったくないのだが、
いつの間に泣いているらしい。

「白石…?おちついた?」
「はい、ありがとうございます、あきら様…でも、」
「ん?」
「離したくないので、このままじゃダメですか?」
「だぁめっ!お風呂は入れないから!」
「じゃぁこのまま一緒に入ります」
「ばか!脱げないじゃないのよ!」
「じゃぁ脱がしてあげまぐはっ」

必ず僕は鉄拳制裁を食らう。
これが幸せの代名詞と言えるか否か
まったく分からないが、
僕はまた、頭を抱える。