拍手SS011 あきら様×白石ぬくもり五題「君にあげたいものは君がくれたもの」


今日は仕事のない日。
週に1度しかない仕事の日が、
いつの間に楽しみになっていた自分がいる。
それに気付いたときは、思わず一度否定した。
だって、そんなことは許されないと思っているから。
それが、わかっていたから。

でも今は否定しない。
否定できない。

自分の気持ちには、正直でありたかった。
それを、隠さなくてはならなくても。
伝えては、いけないから。

「最近なんかあった?」

あきら様はある日、僕にこう聞いた。
いいえ、なにも、と慌てて答えた。

「最近、ちょっと変だよ、白石。」
「そ、そうですか?」

僕の顔をまじまじと見る。
1秒ごとに、体温があがる気がする。

「変なの、顔赤いよ?熱でもあるの?」
「ない、ないですってば!」

ぺたり、と僕の頬を両手で包まれる。
にこにこしながら、あったかいね、と言われた。
更に体温が上がって、収録のときには茹でたタコみたいになってしまったことが
ある。
彼女は僕の顔を指差して笑っていた。
貴女のせいなのに。
もう、なんにもわかってないんだから。

あきら様はきっと、わかっていないんだろう。
僕が貴女をどう思ってるかなんて、知らないんだろう。
いや、そんな演技かもしれない。
けれど、気付かないってことは、僕に気がないんでしょう?

僕は独り、苦笑した。
そんなこと、わかっていたのに、
どうして好きになってしまったんだろう。

部屋の窓を空ける。
冷たくも、春の香りを包んだ風が、僕の鼻にぶつかる。

ねぇ、あきら様。
もう少し、好きで居ても良いですか?
貴女からもらった優しさを、
たくさんの僕の優しさであげて良いですか?
君にあげたいものは、君がくれたもの。

できるだけ、貴女には、優しさを、あげたいんだ。

たとえ、一緒に居られる時間が、残り少なくても。
精一杯の僕の我儘、
聞いてくれますか?