日常で、非日常。(あきしら短文)

今日が何の日か、言われなくても雰囲気だけで解る。
街の色、空気。
全てがピンク、もしくは赤く染まる。

その中で、おかしな空気の流れる場所があった。
それが、とある公園だった。


「どーゆーことよ。」
「どういうこと、と言われましても…」
「あんたはいつもそう、なんなの、なんでそう、いつも曖昧なの?!」
「え、えと…」
「………はぁ…」


この2人、小神あきらと、白石みのる
もちろん、ベンチに腰掛けているのが、あきらである。
みのるはその後ろで、彼女の後姿をみつめるのみである。
彼女は足をばたばたさせながら、砂埃をあげている。
子供のような小さな手足が、全身から不満感を表している。
困ったように、まぁいつも困ったような顔をしているのだが、
彼はため息をつき、そして彼女の後姿を見ないように、彼も後ろを向いた。


「あんたはなんなのよ、あたしのなんなの?」
「それは…その…」
「なによ」
「っと……」

彼はきょろきょろ、と周りの様子を伺う。
怯えたような表情。
顔を、真っ赤にして、ようやく彼は呟いた。

「僕は、あきら様の…」
「の?」
「あ、アシスタントで、あのっ…」
「で?」
「…し、です…」
「ん?なぁに?しらいしぃ、聞こえなーい」

にやり、彼女は不敵に笑う。

彼は、不服そうに頬を膨らませ、
ベンチに腰掛ける。
彼女の、隣に。

「あれ?どしたの?顔赤いよー?」
「………っ」

ぽそりと、風に消されるのではないかと思う位の音量で。

「僕は、あなたの、彼氏、です…」
「だよねー」

彼は、そっと、
彼女の顔を覗き込む。

「大好き、ですから。」
「知ってる」
「だから、あの…」
「?」
「誕生日の、プレゼント…に、」

彼の右手が、彼女の頬に。


唇が、ゆっくり触れる。


離れて、再び触れる。


再び離れるまで、どのくらい経っただろう、
彼女が、にやりにやり、彼の顔をみて笑う。
ゆっくりと彼女の肩に、頭を預ける。
恥ずかしさのあまり、湯気が出そうな位。
かわいそうな位になった彼を、彼女はよしよし、と撫でてやる。
どっちが年上なんだか。


彼女の誕生日であり、
バレンタインであり。


そんな日の、午後のおはなし。