喰/霊#10 悲劇裏を桜庭視点で書いてみようと思ったある冬の午後

以下、桜庭が壮絶に死んだ10話を、
第3者視点ではなく、桜庭視点寄りで書いてみようとか考えたので
つらつら書いてみるテスト。

グロ注意なんだけど
そんなにグロくないとおもう
分からん
所要時間5時間−2時間(ご飯作ってたw)

諌山の行方は、紀之と神楽に任せておけば大丈夫だろう。
今は、目の前に居るカテゴリーDを優先させる。
それに頭をシフトしていた。
こんなにたくさんのカテゴリーDを相手するのは初めてで、
しかも最近まで人間だった奴等だ。
俺は富岡弐拾参號を両手に、マニ弾を放った。


こうなっているのは誰のせいだ?
カテゴリーDはあっけなく倒れている。
しかし数が半端ない。
あとどのくらい倒せばいいのだろう?


「お前等は敵じゃねぇんだよ!」


近くにやってきた奴等を、富岡弐拾参號で殴り飛ばす。
人間だっただけあって、殴る感触は、気味悪いものがある。
トランク型な俺の相棒は、そいつ等の血を含んで赤く染まっていく。


「桜庭!」


突然、岩端のおっさんの緊迫した声がして、
俺は後ろを振り返る。


乱紅蓮…諌山の霊獣が、俺の目の前にいる。
いつ見ても可愛いものではない。
明らかに、こいつは俺を狙ってきている。
諌山は、何を考えている?
軽く、笑いがこみ上げる。
やってやろうじゃない。
俺の勝つ見込み?
あるもんか。
それを知っているのか、
乱紅蓮は雄たけびと同時にその大きな口を広げた。


俺は右手に反動をつけ、そいつに殴りかかる。
ヒットした、と確信した瞬間、全身に衝撃が走る。
右手を、噛まれている。
口の中にマニ弾を発射させようにも、叶わない。
左でどうにか発射させ、その口を開かせようとした。


その瞬間、俺の体は宙に浮いていた。
高く浮き、地面に叩きつけられる。
全身が、ひりひりしている。
乱紅蓮は、俺が右手に持っていた武器を吐き出した。
いつの間に左手の武器は手放してしまっていたらしく、
反撃することも出来ない。
何がどうなっているのか分からぬうちに、
右足に噛みつかれた。
また、高く体が浮く。
すぐに、落ちない。
対策室の奴等が、俺を見上げる。
まるで気味の悪いジェットコースター見たいで、
俺は笑ってしまう。
一気に、コンクリートが目の前に迫る。
反射的に目を瞑れば、痛みは軽減される、
そう勘違いをしていたらしい。
頭から落とされたと同時に、噛まれていた右足が、変に砕かれる音。
俺は、声にならない声を上げる。
意識が遠のくと思ったが、そうもさせてくれなかった。
続けてビルに、背中を叩きつけられる。
ぶら下がっている心地すらしない。
骨が中で砕かれて、肉だけで吊り下げられてる。
手に力が入らない。


諌山?
俺のこと、
そんなに恨んでるのか?


ごみを捨てるかのように、道路に投げられる。
咳き込み、その中に血が混ざっていることにようやく気づく。
体が痛めつけられているのに、
痛みを感じなくなってきている。
全部が痛くて、特に痛いと言うところがないからか。
とりあえず起き上がり、車に背を預ける。
全身かすり傷、全身打撲。
右足が変な方向に曲がってて、頭に負傷。
この状況で、俺が勝てると思う?
また、笑いがこみ上げる。
俺、何で笑ってるんだ?


「桜庭!桜庭!」


遠くで、岩端のおっさんが呼んでいる。
立ち上がることも出来ない。
答えの出来なくなるその前に。


「桜庭、お前…!」
「乱紅蓮は…諌山は、俺に任せろ!だからおっさんは、カテゴリーDの殲滅を!!」


俺のことは構ってくれなくていい。
これが、さよならじゃ、ないんだからな。


右の目の上から、何か流れてくる。
これは、血か?
俺、そんなに重症か?
乱紅蓮が、俺に向かって吼える。
あぁもうだめだ、
力が抜けていく。
ずるずると、体が傾いていく。
世界はいつの間に傾いたんだろう。
いや、俺が倒れたのだ、と気づく。
乱紅蓮は、まだ満足しないのか、俺の両手を噛んで、立たせる。
左の足しか機能しないことに気づくが、宙に浮いていることすら気づかなかった。
正常になった世界を見渡す。
また、帰ってこられるよな?
俺の体が浮き上がった少し後に、
俺の意識も飛んだ。

        • -

「…殺して?殺してよ…」
「っ…」


俺は聞きなれた声で意識を取り戻した。
諌…山?
紀之も、居る…?
紀之?
これを止められるのは…紀之だけ…?
俺の命は、紀之に、かかってる…
諌山は、俺を殺すつもりか?
なぜ?
カテゴリーAになったから?
ぼんやりと、諌山の髪が揺れているのが見える。


「殺して?」


紀之は動けない。
諌山はあきれたように下を向いた。


「つまらないわね…。乱紅蓮。」


大きな体が揺れる。
俺は一呼吸。
目を開いたら、驚愕している紀之が見えた。


「一騎?!」
「よう、紀之…」


なんと言っていいかわからず、
とりあえず、謝罪の言葉しか出てこなかった。


「わりぃ…」


紀之は慌てている。
どうして俺がこんなことになっているか、
あいつは知らないのだろう。
諌山を追うことで、精一杯だったからな。


諌山は、刀を地面に叩きつける。
金属同士の擦れあう音が、気味悪い。


「あなたが私を殺さないなら、私が彼を殺すわよ?」
「よせ!一騎は関係ないだろ!」


俺を殺す?諌山が?
もう…助けることは無理そうだからな。
諌山が、時に愉快そうに、
時に残酷に、元・許婚に発破をかける。
諌山は、紀之が「できない」ことを、知っているから。


「本当のことを言うとね?邪魔だなぁ、って、思ってたの。
 いつもあたしと紀之の時間に割って入ってきて。」
「黄泉!!」


諌山は、飽きたんだろう。
紀之と、何も動かない時間を感じて。
諌山はなんの躊躇いもなく、
俺の肩に刃を突き刺す。


「うあああああああああっ!!!」


予期しなかった痛みに、
俺は耐えられず、声を上げる。


今まで痛みなんて全く感じなかったのに。
そこが引き裂かれるように痛む。
全神経が壊されているような錯覚にも陥る。


「私を殺せば、止められるわよ?」


また一気に、さらに深く、刃が傷口を抉る。
諌山の声は、楽しんでいて。


「うあああああっ!!ああぁぁぁっ!!!」


余裕が、なくなってきた。
痛い。
熱い。
痛みを忘れたくて、喉から声が漏れる。
呼吸が、出来ない。


「ほら、早くしないと、彼、死んじゃうわよ?」


紀之?早く。


「一騎!!」
「紀之…諌山を、殺れ!!…殺れ!!こいつはもう、手遅れだ!」


…紀之?
どうして動かない?
諌山は、もうカテゴリーAなんだぞ?
早く、しないと…俺は…


「彼のいう通りよ?さぁ、それではやく私を殺して?」


紀之?どうして迷う?
何を、怖がってる?


刃が、一気に抜かれる。
一気に血が噴出して。
頭がくらくらする。
まだ、でも紀之は、動いてくれる…


「ここがシングル、ここがダブル、ここがトリプル…」


俺のまだ動く、左足の太ももを見て、うっすら笑う。
諌山?何を考えてる?
どうして構える?
諌山?諌山?!


「諌山、よせ…よせぇっ!!」

マジか、お前?
考える暇なんて与えてくれなかった。
腿の骨の近くに、力いっぱい刀を入れる。


「ああああああああああっ!!!」


神経が、つながらない。
焼かれるような。
痛いとか、違う。


気がつくと、俺の左足は、落ちていた。


「…っ…」


俺は呼吸もままならず。
苦しくて、
痛くて
熱くて、
情けなくて
辛くて
助けて欲しくて。
分かって欲しくて、
そんなんじゃないって。
どうして俺なの
どうして?
なんで?
諌山?
紀之?
どうして?
涙が、勝手に、
落ちてくる。


助けて。
助けて紀之
お前しか、
いないのに。
お前、どうして?


痛いよ
怖いよ
早く、
早く。
嘘だ、
ここで死ぬなんて、

助けて、くれるんだろ?


紀之…早く、



「紀之いいいいいいっ!!!」



嘘…だ…